あから2010

コンピュータ将棋システムの「あから2010」が、清水市代女流王将を下しました。これは、コンピュータ将棋の歴史にとってひとつのランドマークです。

振り返ってみると、人工知能の研究の初期において、哲学者からは「コンピュータには人間のように考えることはできない」と言い切られていました。それを明確に覆したのが、IBMのディープブルーが1997年にチェスの世界チャンピオンのカスパロフ氏を破ったときです。

今回、将棋でもコンピュータが女流棋士のトップに勝ったことで、将棋というチェスよりも複雑なゲームでもやはり人間に匹敵しうるという可能性を示しました。将棋は詳しくないのですが、あからの美濃囲いが無傷の状態で勝利したことを考えると、羽生さんや渡辺さんに勝つ日もそんなに遠くないかもしれません。

実は、今回、あからの開発者からは、今回の試合についてかなりの自信があるという話を聞いていました(10/9の私のソフトウェア工学の講義を受けた人には事前に言いましたが)。

今回のあからの特徴は、複数の将棋ソフトの合議制をとった点です。機械学習の分野では、ensemble や mixture of expertsと呼ばれる、複数の予測結果を統合する手法により、単体の性能を超えられることは良く知られています。ここでは、あからが将棋という複雑な問題において、複数の商用レベルのシステムを組み合わせて、合議制の利点を実証したという点に技術的な意味があるように思います(もちろん内部では私の知らないもっと新しい手法が取り入れられているかもしれませんが)。